北上ウオッチ

2015年10月23日

この一枚は、あなたのためだけ。世界でも珍しい、カシミヤニットのセミオーダーを扱うUTO

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カシミヤって、柔らかくてあたたかいですよね。
この季節には店頭でもすっかりおなじみの素材ですが、
カシミヤニットのセミオーダーを扱うメーカーが北上にあることは、あまり知られていません。

今回の特集では、北上市下江釣子(しもえずりこ)にある、株式会社UTO(ユーティーオー。以下UTO)の工場を訪ね、カシミヤニットの生産現場を取材しました。
世界的にも珍しいカシミヤニットのセミオーダー工場がなぜ北上にあるのか?

全3回でお届けします。

日本製のカシミヤで世界を目指すUTO

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北上市は岩手県の中でも企業誘致に積極的であり、市内に8カ所の工業団地を持つ工業集積都市ですが、ニット工場はUTO一社のみ。しかも現在では特に珍しい国内一貫生産体制をしいています。
ニット業界は工場の海外移転が進んでいるため、UTOのような存在は希少です。

「日本製のカシミヤで世界を目指す」

そんな思いを抱いて始まったUTOは今や首都圏の百貨店からも引く手あまた。工場はどんな様子なのでしょう。
秋晴れの10月初旬、工場を訪ねました。

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UTOの工場は北上駅から車で20分ほどの場所にあります。車を停めてふと目をやると、黄金の絨毯のように輝く稲穂の景色が眼下に広がっていました。ナナカマドも赤く色づき、まさに秋到来!
季節の移ろいを感じられるのんびりとしたこの場所で、世界最高峰のカシミヤ製品が生まれています。
その品質は、世界に名だたる超高級ブランドをも凌ぐほど。
しかも、わずか7人の従業員がこの品質を支えているのです。

長崎県出身の宇土社長が北上にたどりついた理由

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UTO(ユーティーオー)という社名は、社長の名前「宇土(うと)」からきています。宇土さんは長崎県島原市出身の1950年生まれ。東京での旅行会社勤務時代に、ニットメーカーのヨーロッパ視察旅行を企画した縁でニットメーカーに転職、当時まだ珍しかった「カシミヤ」という素材を知りました。カシミヤに惚れ込んだ宇土さんは、ニット職人とカシミヤの商品開発に奔走。数年の試行錯誤を経て現在の「天使」シリーズが生まれました。

そして1992年、自身もニットメーカーとして東京・青山で創業しましたが、卸が主体だったため大量の在庫に苦しみました。2002年になると、宇土さんは会社の舵を大きく切り、関係者なら誰もが驚くカシミヤニットのセミオーダーをスタートさせ、2005年には山梨に自社工場を持ちました。ところが繊細なカシミヤを扱うには高度な技術を持つ職人が必要で、一部の作業は外部委託せざるをえない状況でした。国内でも山梨はニット産業が盛んな地でしたが、カシミヤ専門の職人は少なかったのです。思うような生産体制が築けないまま、月日が流れました。

2011年7月31日、経営難に陥った宇土さんは山梨工場を閉鎖。同時期に、北上市のニット工場が閉鎖したことを業界新聞で知りました。1990年代に工場のほとんどが海外移転で縮小していた国内のニット業界で、北上市の経営者とも面識はありました。聞くと、山梨時代に外部委託していた「リンキング」という作業ができる職人もいるとのこと。招かれた宇土さんは一度北上に行ってみることにしました。

3人のプロフェッショナルとの出会いがターニングポイントに。

2011年8月10日、北上を視察に訪れた宇土さんと出会ったのが遠藤さん。
現在の工場長です(写真下)。

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遠藤さんは「編立(あみたて)」という作業を担う職人であり、この道50年のベテランでもありました。
宇土さんに「続けたい。」と申し出たそうです。

もうふたり、宇土さんに会った職人がいました。
「プログラマー」の小原さん(写真下・左)と「リンキング」の玉澤さん(写真下・右)です。
職人というと遠藤さんのようなベテランを思い浮かべますが、小原さんも玉澤さんも若手ながら経験値の高いプロフェッショナルなのです。
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宇土さんは山梨時代、リンキング職人のほか、プログラマー探しに奔走していた時期もありました。
プログラマーは編立機械メーカーの専用ソフトを処理できなければならず、例えば専門学校などで誰もが学べて活かせる汎用的なスキルではありません。
玉澤さんに至っては、リンキング以外の作業もこなす、願ってもない人材でした。

この3人との出会いが、宇土さんにとって大きなターニングポイントとなりました。

悩みながら帰路についた宇土社長の決断

視察当初はさほど期待せずにいた宇土さんでしたが、ニット生産で要の技術を持つ職人3人が揃っているだけでなく、遠藤さんの計らいにより操業場所も確保できるとのことで、悩みながら東京への帰路につきました。

懸念していた製造設備の運搬も、機械メーカーにも問い合わせたところ、山梨から運べるとの回答も。
何かの思し召しのようにすべてが整ったのです。
宇土さんは移転を決め、2011年10月に北上でニット工場を再開しました。

折しも2011年は東日本大震災が起きた年。内陸である北上市にも、三陸沿岸から大勢の方が避難していました。「少しでも役に立ちたい。」宇土さんの中にはそんな気持ちが少なからずありました。セミオーダーのUTOブランドのほかに、新たにプレタポルテ(既製服)のUTO kitakamiを立ち上げ、一枚販売するごとに100円を寄付として、北上市を通じて募金しています。

こうして、北上とは縁もゆかりもなかった宇土さんが導かれるようにやってきたことで、世界的に見ても珍しい、カシミヤニットのセミオーダーを受注するニット工場が北上に誕生しました。
現在、北上工場には遠藤工場長を筆頭に7人の職人が、東京・青山のショールームにはデザインや企画業務、通販を担当する従業員が8名在籍しています。

(写真下)宇土社長とスタッフの皆さん。北上工場にて。
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次はカシミヤ製品の生産工程、天使のストールの紹介と続きます。

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■本文(文、写真):(株)キミドリ

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